延岡の釣り、ヤマメの毛ばり釣り(テンカラ釣り)


五ヶ瀬川支流、細見川(小川)を遡ること約10km、二股地区を流れる渓流にはヤマメが豊富だ。

土地の人の話では、その昔、昭和20年代位までは秋になると鱒(ます)も遡上してきていて、

川は賑やかだったそうである。

ヤマメ、鱒のほか「とこなつ」と呼ばれる体長60cmのサケ科の大魚もいた。

とこなつは多分「常夏」と書くのであろうが、その場所に年中居ついていたそうである。

その後、川の環境も変わり、魚は少なくなったが、最近の新聞報道によると、五ヶ瀬本流で鱒が網

に掛かっており、細々とながら遡上してきているものと思われる。

ヤマメは、音にも光にも敏感で、用心深く、俊敏である。

ヤマメは上流に向いて、流れてくる餌をまっているので、釣り師は、木化け、石化け、忍者のごとく、

ヤマメの背後にあたる下流から釣り上らねばならない。

ヤマメ釣りには、餌釣り、毛ばり釣り、ルアーなどの方法があるが、筆者は餌釣りに何回か出かけるうち、

毛ばり釣りという、餌をいちいちつける手間の掛からない、便利なつり方があることを知り、早速転向した。

毛ばり釣りは長野県の木曽地方でテンカラ釣りと呼ばれていた。日本版のフライフイッシングである。

毛ばり釣りを始めても、餌釣りに戻っていつた人を何人か知っているが、餌釣りのベテランほど毛ばり

釣りに転向するのが難しいようである。それというのは、毛ばり釣りはアワセが難しく、最初の内は釣果が

全くといって良いほど無いからである。

難しいといっても、3,4回の釣り行でぼちぼち釣れるようになるのだが、そこまで辛抱できず、

毛ばりを追って飛び出てくるヤマメの姿を見て、「餌釣りならば、」と、はがゆい思いから、つい餌釣りに

戻ってしまうのだろう。

しかしながらヤマメの毛ばり釣りは「ヤマメが居さえすれば」その他の道具、毛ばりなど

については神経質にならなくても釣れる。ある程度いい加減なものでも充分喰い付いてくる。

筆者は後に出てくる北川水系の鐙川沿いの国道10号線を通りかかったとき、ヤマメつりの下見のつもりで、

その支流を歩いてみたことがあった。そのとき何も持っていなかったので、木の枝に引っかかっていた

釣り糸にそれらしく見える黒い1.5センチほどの枝を結びつけ、そのあたりに落ちていた竹のきれはしに

つないで水面を流してみたところ、ヤマメがあらわれ、えさでないことを確認する様子を見たことがある。

ヤマメが毛ばりをくわえ、餌でないと認識して毛ばりを口から放すまでが約0.2秒。この間にあわせて

釣り上げるのは、「今食いついているからこの瞬間あわせよう」というような悠長なものではなく、

いわば勘の世界である。

ヤマメの姿をチラッとでも見たらすかさずあわせるのがコツだが何回か釣りに行く内、ヤマメの姿を

見たとたん腕が自動的に動いて、そのとたんヤマメが釣れているようになるので、

それまでは「辛抱我慢」である。

反射神経を鍛える為のサイトが色々あり、それらで練習すると必ず効果があるので試していただきたい。

この動体視力トレーニングも即効性がある。

ヤマメのポイントは、いろいろで、川底の地形によっては、思わぬ場所にいるので、

細かく探っていくのがよい。

緩やかな流れでは毛鉤はフワリと着水させて、水面をチョンチョンと躍らせたり、ツーと引いてみるのが

効果的である。

速い流れでは、毛鉤を見失わないように気をつけて、流れのままに1mほど流し、引き上げて、又ふりこ

む、を何度か繰り返してみる。 流れに逆らって、水面の毛鉤を上流にむかって引くのも効果がある。

その内、待望のヤマメが、バシャリと反転、または水上10cmをイルカのように横に飛ぶ、

垂直にピョンととびだすなど、さまざまなフォームで現した姿に、胸をときめかせることとなるのだが・

竿は3mまでのものに、4mほどのラインで5〜6m先のポイントに充分届くので、それ以上の長さは

不要である。

あまり長いと、かえって後ろの藪や、頭上の木の枝にひっかかったりして邪魔になる。

宮崎県北の渓流のほとんどを釣り歩いてみたが、これより長い仕掛けはほとんど必要無いといえる。

道具立てとしては、竿(2.5m〜3m)、テーパーライン(道糸)、ハリス(1〜1.5号、60cm)

毛ばり、であるが、そのほか偏光サングラス、びく(腰につけるタイプ)と、足ごしらえには滑り止めのついた

靴(地下足袋など)が必要である。

とくに偏光サングラスは、水面の光の反射を押さえ、ヤマメの姿が見やすくなるので重要である。

竿は、市販のテンカラ竿があるので、それを使うのは勿論良いが、4m以上の長さになると扱いが難しく

なるので避けるべきである。

筆者は竹を切ってきて自作している。

本格的な和竿を作ろうとすれば膨大な手間暇がかかるが、外観にこだわらなければ割と

簡単にできる。

形の良い布袋竹か男竹の3m程度のものの枝を取り、2本継ぎにするために真ん中辺りで切り離す。

持ち運びのために2本継ぎにするのであって、当然一本ものが理想である。

筆者は2.5mくらいの長さでも良い思っているが、おおかたの世間の意見に妥協して最初は3mでよい。

竹にも個性がある。3mであっても細いの太いのいろいろあるが、極端なものを避ければ、だいたいが

7、3調子の竿に仕上がる。7、3調子とは手元から七分目のところで最大にしなうものを云うのであ

るが・・・ 細すぎてグニャグニャと柔らかすぎるのは避けて、硬いくらいが良い。

これを、火にあぶって、出てくる油を乾布でふき取りながら、曲がりを直し、かたちを整える。

これを2〜3週間放置して乾燥させ、再度、前記の油抜きをすれば、尚良いが、急ぐ時は一度でよい。

穂先の継ぎ手側にはインロー芯を差し込んで接着し、手元の継ぎ手に差し込めるよう細工する。

継ぎ手は、使い古しか、安いグラスの竿を買ってきて、ちょうど良い太さの部分を切り取って使う。

一番外側のパイプがグラスの竿を切ったもの。手元側の竹とグラスは接着する。

穂先に綿糸を適当な太さに縒って取り付け、、竹が充分乾いたところで、漆を塗る。漆の代わりにニスでも

よいが、どちらも2~3回塗り重ねる。これはせっかく乾いた竹が水分を吸って弾力を失うのを防ぐ為である。

この塗りは竿の寿命に大きく影響するので、せっかく作った竿を長持ちさせるためには

しっかりとやっておきたい。

後は握りの部分などを工夫されると良いとも思うが、このままでも良い。

これで充分実用に耐え、釣果はカーボン竿に勝るとも劣らない。

そして何本か作っているうちに竹の美しさに目覚めてくる。

テーパーライン(道糸)は市販品(テンカラ用ライン)もあるが、

自作する場合は2〜3号のテグス各50〜60cmを、5本縒り4本縒り、3本縒り、2本縒り、

1本、と次第に細くしていき、結び合わせ、5本縒りの端には、竿の穂先に取り付けるための、

3cmほどの綿糸の輪をつなぐ。

これは道糸に重みを持たせ ムチのような効果をもたせるためである。

昔はこの道糸に馬の尾を使っていた。馬の尾はしなやかで適当な重みもあって良かったのであろう。

テーパー
テーパーライン(3号、6本縒り、5本縒り、4本縒り、3本縒り 、2本縒り、)

名人は5mはなれたところの茶碗に毛ばりを百発百中振り込むそうである。

全長は、竿の長さと同じを基準に、長,短いくつか作っておき、状況に応じて使い分ける。

ハリスは太くても影響はないが、しなやかさを考慮して1.5号が良いと思う。

レベルラインとテーパーライン
テンカラ竿にはレベルラインとテーパーラインの2種類がある。
これはレベルライン用の竿とテーパーライン用の竿の意味で、レベルライン用の竿にテーパーラインを使用する人も多いようだ。
テーパラインのほうが多少扱い易いからである。

毛鉤は釣り針のチモトを折り取り、綿糸で輪を作って、胴の部分と一緒に巻き込む。胴には、金ラメ

などを巻いて目立たせても良いが、羽の部分も含めてあまり派手にすると逆効果になるようだ。

すずめの羽が成績がよいと物の本で読んだので、「やきとりや」に出かけていって事情を話してみたが、

「今時は中国からこんな形で入ってくるので。」と、アルミのトレーに並んだ丸裸のすずめを見せてくれた。

道に落ちている鳥を拾ったりして、色々な鳥の羽根を試してみたが、真っ白、黒、赤などは避けるべきで、

中間色のものなら先ず間違いが無い。

とはいっても毛ばり釣りは見て釣る釣りなので、ポイントに着水した毛ばりをを見失ってはどうしょうもない。

ある程度目立たせる必要はある。視力などの個人差もあるので、自分なりの最善の仕掛けにいたるま

では 試行錯誤であるが、真っ白、黒、赤などを避けていれば神経質になる必要は無い。

筆者はニワトリの羽根で作った車のホコリ取りから一本一本むしって使っている。

芸術性を追求するなら別であるが、あまり毛鉤の形にこだわっても意味が無いと断言できる。

肝心なことは、ヤマメのいるポイントに的確に毛鉤を振り込み、さも生きているかのように

躍らせることである。

総じて魚は動くものに反応し、それが餌だと判断すれば食いついてくる。

だから毛鉤にそれらしい動きを与えることが肝要である。

ヤマメは日当たりの良い、明るい場所を好むようだ。

毛鉤は疑似餌なので、贋物と見破られないよう、たそがれ時の夕闇迫る頃がよいという人もいる。

薄暗さは確かに好条件ではあるが、足元がはっきり見えなくなれば危険でもあるし、

あまりおそい時間はおすすめできない。

筆者などは何度転んだか知れない。ヘルメットを着用すればよいが、そこまでしている人はいないようだ。

話を戻して、一番喰いのよいのは、やはり夕まずめ、それと雨が「ザーッ」と降り始めた時である。

雨が降り始めると岸辺からエサが流れ込んでくるので、喰いがたつと思われるが、

これは他の魚にもいえることである。

最初はヤマメはどこに居るかわからないと思ったほうが良い。

「人家の近くや橋の下などに意外といるんだ。」と教えてくれた人もいる。

逆にどこにでもいる可能性があるということである。淵のよどんだところにいることもあるし、

急な流れにもいる。

先に書いたようにヤマメは、音にも光にも敏感で、用心深く、俊敏なのでくれぐれも油断なく。

流れの急な場所では毛鉤を振り込んだら1m ほどながしてみて

引き上げ、再度振り込む、これを何度か繰り返す。

淵など流れのゆるやかなところでは毛鉤が着水したらすぐさま水面を引いてみる。

または、チョンチョンと水面をジャンプさせてヤマメに毛鉤と悟られないように演出する。

深みからあがってきて毛鉤に鼻ヅラを触れんばかりに近づき、偽物と見破って又深みに潜っていく

ケースもあるので、ここはヤマメとの知恵くらべである。

深みからあがってくるヤマメがそのまま毛ばりをくわえるか、又は偽物と見破って又深みに潜って

いくかの見極めはおそらく誰にもできないので、この場合は、ヤマメが毛ばりに近づいたら毛ばり

少し躍らせる。すると喰いつく可能性が高くなるというわけである。

初心の頃は「少し躍らせる」つもりが、毛ばりをヤマメが咥える前に水面から引き上げてしまう

という失敗があるのでご用心。

 やまめ Uへ

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